インタビュー:NPOあいの実理事長

NPOあいの実は主婦たちが集まって一から作った訪問介護の事業所です。NPOあいの実にこれから関わろうとしている人たちにとって、この事業所がどんなところなのかが気になるのではないでしょうか。そこでNPOあいの実の乾祐子理事長にお話を伺いました。

−設立のきっかけを教えてください。

あいの実設立の思いを語る乾理事長

あいの実設立の思いを語る乾理事長

実は義父の介護を六年間した経験があったんです。その当時は介護制度がきちんと整備されておらず、一人で本当に大変でしたね。まさに孤独な戦いでした。今の介護の制度を勉強してみて、ご高齢の方や障害を持たれる方、またそうした方を支えているご家族を、社会全体で支える仕組みに感銘を受けました。自分が介護をしていたときにこんな制度があったらなぁと思いましたね。それで、介護制度を理解するなら、自分と同じような大変な思いをしている人を助けられるという思いが高まって、真剣に取り組むようになりました。ヘルパーの資格を取った後は自分も登録ヘルパーとして経験を積み事業所を立ち上げました。

−「あいの実」という名称にはどのような意味がありますか。

事業所立ち上げに協力してくださったのが東京の「NPOあい」さん(現社会福祉法人あいの樹)でした。「あい」さんから生まれた実ということで「あいの実」となりました。それに、ヘルパーさんの示す愛からたくさんのよい実を産み出して、利用者さんのところに届けてもらうという意味もあります。

−質の高い勉強会を積極的に開催しているようですね。

“質が高い”と思っていただけたら光栄です。わたくしどもの事業所は難しいサービスを行う事業所なので、知識を曖昧にしないようにしたいと思ったんです。手順や手技にも必ず意味があり、それを知って仕事に携わるのと知らないでするのでは全く異なってきます。また、利用者さんの気持ちや考えを知ることにも重点を置いています。機械的に作業をするだけでなく「気遣い」がこの仕事にはどうしても必要ですからね。自分で“被介護者”体験してみることも本当に大切なんですよ。

毎年好評のストレスカウンセリング

わたしたちはヘルパーさんを大事にしたいと考えています。ヘルパーさんたち一人ひとりが本当のプロフェショナルとなって自分の仕事に自信と誇りを持ってもらい、やりがいを感じて仕事をしていただくためにも、こうした勉強会が不可欠だと考えています。ヘルパーの向上心を育て、育った向上心を満足させ、どんどん向上していく循環が作れたらいいですね。

それに、ヘルパーは孤独な仕事なんです。自宅から現場に向かい自宅に戻ることも多いため、仲間とのつながりが少なくなりがちなんですよ。仲間と仕事の苦労を分かち合い、励ましあう機会ともなればと思っています。
あいの実の利用者様の中には重症の方が多いため、利用者様の死に直面することだってあります。ヘルパーさんの心のケアも必要ということでストレスカウンセリングも定期的に行なっています。

−現在の介護の現場の問題を教えてください。また、それらにどのように取り組んでいかれますか。

これは行政の問題になってしまうので、とやかく言えないことなのですが、現場ではたくさんの矛盾があります。文言でくくられた法律の限界を感じることがたくさんありますね。例えば生活援助があります。生活援助を受けるためには一人暮らしをしていることが条件なんです。でも、現実に生活援助を必要としている人が一人暮らしとは限らないんですよ。一例をあげると、家族と同居はしているけど他の家族全員は朝から晩まで仕事に出ており、“事実上”一人暮らしという方がいらっしゃいます。でも、残念ながらそういう方のところに生活援助で入ることはできないんです。法律が何らかの仕方で変わらなければ、わたしたちにはどうすることもできません。
あいの実本部事務所

あいの実本部事務所

設立当初、最初の利用者さんが重症者で、たん吸引の必要な方だったんです。たん吸引に関してはたくさんの問題がありましたね。まず、ヘルパー自身がたん吸引をすることを受け入れるかが問題でした。同意したとしても知識も技術もなかったんです。それで、教えてくれる先生を探したんですが、なかなか見つからず苦しかった時期がありました。やっと、ある看護師さんが吸引の知識を教えてくれることになったんです。ほんとうに感謝でした。たん吸引に関する背景を考えると、教えてくださる看護師さんやお医者さんは非常に少ないのが現状です。たまたまだったんですが、たん吸引を必要とされる利用者様が、最初は口腔内吸引の利用者様、鼻腔内の吸引が必要な利用者様、気管切開している利用者様、呼吸器をつけた利用者様、と、段階的に難しい手技を必要とする利用者様の介護に関わりました。同時にヘルパーも技術と知識を身につけながら進歩して来ることができました。

−これからの展望をお聞かせください。

訪問看護ステーションをもちたいと考えています。ヘルパーが現場で分からないことがあると主治医や訪問看護師に聴くことができますが、どうしても理解できないことなどをゆっくり詳しく教えてもらうことができると思います。最初の介護に入る前から注意すべき点を教えてもらうなどの利点もあります。確かな技術を持った事業所を目指したいとおもいます。
介護のプロフェショナルがあいの実にはいる、と周知していただけるようにこれからもがんばっていきたいと思います。
DSC_0034-1-300x199■乾 祐子
□NPOあいの実 理事長
□一般社団法人重症心身障がい児デイサービスネットワーク 理事
□昭和27年生まれ 仙台市出身
1女2男を育て平成17年に主婦数人と共に「NPOあいの実」設立。自身や子供たちも特定難病疾患を経験し、それらの経験を生かした「弱い人を理解できる・頑張っている人を応援する経営」をめざす。気さくな人柄とバイタリティーあふれる言動で知られる。