ヘルパーによるたん吸引の取り組み − 代表者の思い

以下は「第4回遷延性意識障害患者を考えるフォーラム」より抜粋となります。


私達は、平成17年5月に事業所を設立しました。

初めての依頼者が要介護5の方で、吸引を必要とされる方でした。「医療の専門知識のない私達に、安全に吸引が出来るのだろうか」と不安になったことを憶えております。

しかし、頻繁に吸引を必要とされる利用者の方にとって、「吸引をしないヘルパーはなんの役にも立たない」という事ですから、皆で相談した結果お引き受けする事にしました。

尚、痰吸引を必要とされる利用者様とは、痰吸引についての契約書を交わしていただき、ヘルパーさんとも同意書を交わしていただいた上で、行わせていただいております。

以下の動画は痰吸引サービスを行っているあいの実ヘルパーインタビューです。

痰吸引の問題点

初めに問題になったのは、ヘルパーが吸引を受け入れてくれるかどうかでした。そこで、事業所内でアンケートをとったところ、当時登録していた25人のうち20名のヘルパーが行うという回答でした。その後、安全に吸引をしている様子を見て自分も行うと申し出たヘルパーもおります。

吸引の技術を誰に教えていただくかが問題でしたが、ご家族、訪問看護師、主治医、入院先の病院での研修で教えて頂くことができました。又、ヘルパーが吸引される方の痛みを知ることは大事なことだと思い、お互いモデルになり吸引の練習をしましたが、鼻腔の時は皆じわーっと涙がこぼれていました。

吸引は医療行為であるとの前提に立ち、医学的な知識も是非取り入れたいと思いました。初めはなかなか教えてくださる先生が見つからず、困っておりました。しかし、理解ある先生方からのご指導をいただき、行うことができました。その先生方には本当に感謝しております。

痰吸引の安全性に関してデータを取る

今まで痰吸引を行ってきたご利用者様の中には、パーキンソン病、脳血管障害、ALSの方などがおられました。

痰吸引を必要としておられる遷延性意識障害家族会会長の沼田様より、痰吸引の安全性に関してデータを取ってみるよう勧められ、吸引データを取ってみ ました。

データ結果と結論

記録に残っただけで、3ヶ月間合計2470回の吸引を、月一人平均65~79回行っています。

2470回中、少量でも出血がみられたものは合計16回で、吸引回数中の0.648%でした。

そのうち、カニューレ交換後の出血を除くと、6回ですので、率にして0.243%です。

年月 のべ 回数 吸引したヘルパー 出血などが みられた回数 特記事項
2006 年 10 月 870 回 11 名 気管 7回
口腔鼻腔ルーメン 4回
(カニューレ交換後 7回)
(カニューレ交換後 3回)
透明・白色と共に 1回
2006 年 11 月 679 回 10 名 気管 0回
口腔鼻腔ルーメン 1回
左鼻より少量出血 1回
2006 年 12 月 921 回 14 名 気管 1回
口腔鼻腔ルーメン 3回
微量 1回
ルーメンより血が混じったものを吸引 3回
合計 2470 回 16 回 (交換後除く) 6回

結論として、データからも出血がみられたのは0.2%であり、痰吸引を行っての危険性は全くないとは言えないものの、安全の枠内ではないかと思われます。

当然、大きな事故に至ったケースはありませんでした。データとしてとったのは、3ヶ月間ですが、貴重なデータとして今後の活動に十分に生かしていきたいと思っております。

今後へ向けて

これからも、医療行為としての痰吸引を安全に行えるように、医療の知識・介護の知識や技術を深めて、医療関係者やご家族との連携を密に取りながら、安全性と技術を高めていきたいと思っています。

そして、痰吸引を必要としておられる方々に、可能な限り安全な痰吸引を提供することで、ご利用者とご家族の方々が、ともに生きる幸せを得られるよう支援を行って行きたいと考 えております。